●氷期からの池 上賀茂にある深泥ヶ池はどんな季節に訪れてもひっそりとして、水面が動く気配もありません。「隠沼(こもりぬ)」という言葉が思い浮かびました。 この池はウルム期(氷期)の太古から存在しており、かつて京都は湖の底であり、「冬はい …

●氷期からの池 上賀茂にある深泥ヶ池はどんな季節に訪れてもひっそりとして、水面が動く気配もありません。「隠沼(こもりぬ)」という言葉が思い浮かびました。 この池はウルム期(氷期)の太古から存在しており、かつて京都は湖の底であり、「冬はい …
●花の瞳 日ざしの明るい夏の訪れを実感する野菜の一つに空豆があります。一茶が「空豆の花に追われて更衣(ころもがへ)」と吟じています。空豆の3弁の花(写真上)は初々しさよりはどこか成熟した女性を思わせ、赤みを帯びた黒い部分は、こちらを見つ …
●調味の基礎 梅は、春を心待ちにする人々の心を、その色、その香、その姿でとらえ、実は貴重な食材となってきました。 古代における調味料は塩と酢でした。酢は梅からつくり出されました。「塩梅(あんばい)をととのえる」という言葉がその証左です。 …
●季節の中の麦 4月の風に青い麦の穂が揺れています。近づくと穂から針より細く鋭い芒(のぎ)がきっぱりと、まっすぐに空を刺していました(写真上)。 透明感があって、激しい姿でした。室生犀星は「なにものをか示さむとしつつ/はげしく匂(にお …
●魔王尊の降臨 市中から洛北の野を走る叡山電車に乗るとわずか30分で鞍馬の地。今なお山気と呼ぶべきものが漂っていて、650万年も昔に「転迷開悟 破邪顕正」の魔王尊(サナト・クマラ)が地球を救うべく、金星から鞍馬山に依(よ)り降ったという …
●その意外性 朝まだき、地を這(は)うように蔓(つる)を伸ばして日に日にほの赤さを増してゆく苺(いちご、写真上)の葉が露を宿していました。苺の葉縁には水孔(すいこう)があって、朝露は苺の健康な生理なのです。葉の冴(さ)えた緑に白い5弁の …
●植物の性 か細い蔓(つる)なのに生き生きとして速やかにすがるものをとらえて上へ上へと伸びてゆき、次から次へと蝶(ちょう)の形をした花を咲かせてゆきます。 豌(えんどう)という字はその莢(さや)はかすかな曲線を持っているので、美しく曲 …