京野菜は、京の花。
身の回りに生きるすべを見出し、それを極上の品にまで仕上げる、まさに文化の花こそが京野菜ではないでしょうか?
わたしたちは野草を京野菜にまで仕上げた古人に、そして京野菜そのものにも学ばねばならないのではないでしようか。
例えば「すぐき菜」は、400年ほど前に上賀茂神社の神職者が、賀茂川の河原に自生していたカブラのような植物を自分の家で栽培したとされる説と、宮中に献上された野菜を上賀茂神社の神職者が、もらい受けて栽培したのが始まりという説があります。いずれの説が正しいのか分かりませんが、もしも後者であれば、どこから献上したものかがわかるはずですから、どうも前の説が正しいように思えます。いずれにしても神職者の努力によります。
また、堀川ごぼうは、豊臣秀吉が建てて8年後に壊した聚楽第の堀がゴミの捨て場になり、江戸初期、その堀に捨てられていたゴミの中に、食べ残しのごぼうが巨大に生育しているのが発見され、付近の農民が栽培を始めたのが起源とされています。もしそうであれば、それを発見し育てた農民に敬意を払わねばなりません。
京野菜、それは歴史をはじめ様々な情報を秘めた媒体でもあります。
そんな京野菜の魅力を菊池昌治さんが、栽培の現場を丹念に歩き、野菜に対する造詣と文学に対する深い思い入れで書かれたもの、そうです、京野菜への愛情一杯で書かれた玉稿を掲載させていただけることになりました。おおよそ60回の連載が可能です。どうぞ存分に京野菜を楽しんでください。
菊池昌治さんは『現代にいきづく京の伝統野菜~古都の食文化を担って』他、京都に関わる数々の書を出版されています。以下、ご参考に書名を紹介いたします。
『写真で見る京都今昔』
『京都の魔界をゆく―絵解き案内』
『七宝の魅力―よみがえる伝統工芸の美を求めて』
『染織の黒衣(くろこ)たち』
『京都染織模様 (日本図書館協会選定図書) 』
『京都転転』
『京都 味の風土記 』
『万葉散策』
『京都文学巡礼―作家の眼で見た古都像』
『京都ひと模様』
『京洛往還記』
[文: miya]
[写真: fuku]