激変する世界に向けて1200年生き延びてきたKYOTOから生き延びる智慧とヒントを発信

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 上七軒である。

 おぉ!と密かに喜んでくれる男性諸君には申し訳ないが、花街でもお座敷遊びの紹介ではない。自分のお金で遊ぶほどの甲斐性もないし、深い体験がないからか志向も嗜癖もない。松岡正剛氏のように幼い体験もないから、『千夜千冊』で『日本花街史』で書かれているような記憶もないし、「まして花街の体験を何度か体験してしまった大人たちにはおいては」と書かれたような感慨もない。

 そんな私が上七軒に行きたくなるのは、お座敷遊びでなく、なんとなく「京都」に浸れる気がするからなのだろうか。京都の少し昔の風情を味わえるからだろうか。京都の正統派とでも言うべき味を楽しめるからだろうか。いずれにしても上七軒の「おかもと紅梅庵」が好きだからだろう。

 残念ながらと言っておくが、このお店はお茶屋さんではない。お茶屋さんに料理を提供する仕出し屋さんだった。創業65年と言うから、第二次世界大戦中か戦後間もない創業なのだが、上七軒の歴史はさらに古い。もちろん京都で最古の花街であるが、「上七軒」と言う地名が歴史を語っている。

 何でも15世紀の中頃、北野天満宮の一部が消失し、その修造の際に残った用材を使って、お茶屋を建てたが、それが7軒だったことから「上七軒」と呼ばれるようになったそうだ。他にもいろいろ歴史的な由緒があるが、それを語る場でもないので、この界隈が京都市の重要景観整備地区に指定されていることだけでとどめる。

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玄関を開けると長い廊下

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両側に壺庭の小部屋

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小さなお部屋

 その町並みを楽しみながら、格子戸を開けると、昔ながらの京都がある。細長い廊下の向こうの、両側に坪庭がある小部屋に案内される。予約の時にお願して、運が良ければ、この部屋で「しっぽり」と楽しめる。「しっぽり」と言うと、男女の仲のこまやかなさまの意味が優勢だから、「しっとり」と、にしておくが、実に静かに、のどかに、壺庭の風情、軸や生け花などがあしらわれた空間と時間そのものを楽しめる。

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先付け

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お造り

 先付けは、可愛い三つの器に、それぞれ、イカとメンタイコ、イクラと菊菜とシメジ、サツマイモの白和え。造りは、鯛、イカ、マグロ、ウニ。

 そして写真を撮り損ねたカマスの寿司とモロコの南蛮漬け。さらによもぎ麩のいなり巻き、だしまき、おぐらなんきん蒸し、穴子の蕪蒸し。九条葱とエノキの入ったカキの味噌仕立て。鰆の幽庵焼きと秋刀魚の大根巻き。ナマコ、蟹、ホタテの酢のもの。蟹メシと豆腐、湯葉とメネギの吸い物、そしてメロンと苺のデザート。

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牡蠣の味噌仕立て

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鰆の幽庵焼き他

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酢のもの

 食事を羅列し、また撮りそこなった料理もある。それは料理が満足できないものでは決してないし、もちろん急いだり慌てたりしていたわけではない。全くその逆で、実に美味しい。しかも懐かしく、正統派とも言うべき味を楽しみながら、ゆっくり、しっとり、あるいはしっぽりとし過ぎたのかもしれない。だから食べ終わってから写真を撮っていないことに気付くことがあっただけである。さらに忘れてならないのは、心遣いで、途中のカキの味噌仕立てと最後の蟹メシは幾つかの旬の鍋と御飯を選べる。それだけのことだが、妙に嬉しくなる。

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蟹メシ

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蟹メシ・吸い物・漬物

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デザート

 料理と言うものが食べるためだけでないということ、ある時は話題を盛り上げ、ある時は沈黙させてしまい、ある時は、言葉にならない感嘆詞を吐いてしまい、ここで料理を頂戴することは、体力をつけ、エネルギーを蓄えるための食べると言う生理的な行為だけではない。ある種、芸術的な鑑賞でさえある。そして美味しい食事をするという生き物としての基本的な喜びと満足が基本にあるから、見送られながら外に出て、一緒に食事をした人を見て、セネカの言葉を思い出してしまう。古代ローマの哲学者が言ったとされるのは、
「大事なのは何を食べるかではなく、誰と食べるかである」と。

 そんな言葉を思い出させてくれる気持ちのいい時間だった。

[文・写真:moon]

京料理 おかもと紅梅庵
住  所:京都府京都市上京区社家長屋町678
<今出川通御前東入ル、北野天満宮東門前>
電  話:075-462-1335
営業時間:11:30~15:00 17:00~22:00
定休日 :火曜日(祝日の場合営業)

このBlogは『moon』いう集合名詞のスタッフが、勝手に食事にお邪魔し、写真の許可だけを貰ってご馳走を頂戴し、これは掲載すべき美味であると感じたものだけ、食後に料理人などに少々のインタビューを試みて構成しています。各食品の感想を語ることを極力控えるのは、味は舌を媒体として個人個人が感じる以上、言葉では「美味しい」という表現が最高と思われますし、それ以上の表現はなかなか難しく、また自分自身で感じてもらいたいし、また個人個人の趣味もあります。ですから、なるべく写真で紹介して、全体としてのイメージを伝えることを主とします。但し、一切の責任は当ホームページの主催者にあり、賛同、苦情などはコメント又はメールにてお願いします。

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