激変する世界に向けて1200年生き延びてきたKYOTOから生き延びる智慧とヒントを発信

根菜ベジ味噌ライス

 紅葉の始まった賀茂川の両岸を眺めながら味について考えた。舌の表面に無数の小さな「乳頭(にゅうとう)」という突起があり、そのぶつぶつの中に味細胞が集まってできた「味蕾(みらい)」と言う器官がある。味の蕾とは良く言ったもので、それだけで味が花開くのではなく、この蕾が味覚神経を介して大脳に伝えられて、味を感じる。美味しいものを食べると、まさに花開く感じではある。

 その味そのものの基本は甘味・鹹味(かんみ・塩から味)・酸味・苦味の4つあったが、日本人の研究で5つ目の「うま味」が生まれたんだ、そう北山通りの美しい紅葉を見ながら思った。四季折々の季節から生み出される自然の恵みを頂戴してきた日本人だからこそ、「うま味」を付け加えることができたに違いない。日本食は文字通り世界最高のレベルにある。

 それは身びいきではなく、すでにアメリカでは、1977年医療費を抑えるために徹底した調査をし、「心臓病をはじめとする諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした《食原病》であり、薬では治らない」とし、更に「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を改善する必要がある」と日本で言う国会で報告された。これが有名なマクガバン・リポートと言われるもので、その中に、「最も理想的な食事は元禄時代以前の日本人の食事であること」が明記されていた。元禄時代以前の食事と言うと、精白しない殻類を主食とし、季節の野菜や海草や小さな魚介類が副食といった内容だった。

 それ以前から日本食の素晴らしさに気付いて、世界に日本食を広めようと、桜沢如一氏がマクロビオティックというものを始めたが、現在では坂本龍一、松井秀喜、ニコール・キッドマン、トム・クルーズ、ジョン・トラボルタ、シャロン・ストーン、マドンナ、リッツカールトン、クリントン元米大統領、ゴア元米副大統領、カーター元大統領などが実践している。またビーガンと言い乳製品やその他の動物性のいかなる食品をも口にしないベジタリアンもいる。

 そこまでしなくても、そう言う健啖家の人は、アレルギーで悩む人の気持ちはわからない。現在ではアレルギー大国とでも呼べるほど種々のアレルギーに苦しんでいる人が少なくないが、それも食の乱れが原因なのだろう。

 賀茂川から北山通りを東に歩いたところにNadiのPing Pang Caféという美味しい玄米と野菜のカフェがある。このカフェ・マネージャーのエリコさんもご子息のアレルギーに悩み、自然食から完全菜食(ビーガン)に目覚めたお一人。彼女が日々研究工夫して提供する食事とスイーツは「旬の地野菜をふんだんに使い、生命あるものをフレッシュにいただく、おいしい玄米と野菜料理」というコンセプトを大切に考えられたものばかり。

根菜ベジ味噌ライス

根菜ベジ味噌ライス

豆腐ピザを野菜一杯スープと

豆腐ピザを野菜一杯スープと

 ちなみに頂いたものは、「根菜ベジ味噌ライス」と「手作り豆腐ピザ」と「野菜一杯スープ」。これで二人がお腹一杯。とは言え、別腹に任せて、「豆乳プリン」と「焼きりんご」を「ごまっチーノ」と「エキネシア」と言う飲み物でいただいた。

 野菜レシピの多彩さは後ほど紹介するとして、不思議に美味しい。先ほどの味覚の分類に入らない美味しさを感じる。どう表現すればいいのだろう、健康の味と言うか、体が欲しがる味と言うか、例えば、豆乳の苦手な二人でもふわふわの豆乳プリンは感動の味だった。ココナツと玄米のアイスクリームがのった焼きりんごもお勧めである。黒糖とシナモン、ピーカンナッツ、ラム酒が渾然一体で魅惑の味に仕上がっている。

 では、メインディッシュはどうかと言えば、まずその野菜の多さに驚く。「根菜ベジ味噌ライス」は、日頃不足しがちな根菜が一杯周りに並べられる。ごぼう・レンコン・人参・玉ねぎ・サツマイモ・カボチャ・トマトなどを長時間かけて蒸し焼きにし、麦味噌のみでシンプルに味付けする。玄米が美味しい。我がホームページのスタッフはアメリカ人女性を含めて、ほとんどが玄米食である。健康のために食べ始めたのだが、誰もが好きになった。と言っても、玄米はおかしなもので、どうしても食べられない人と、玄米を食べないとやってられない二種類の人間がいる。スタッフは後者で、しかも不耕起自然農法で作られた玄米で、当然、トレサビリティも可能である。

 豆腐ピザは、菊菜、トマト、手作り豆腐で作られているが、普通のピザはチーズと肉類が苦手な私はあまり食べないが、久しぶりにピザを味わえた。もちろんチーズなどかかっていないが、かわりに「かんずり」と言う万能薬が普通のピザの味に近づけている。もちろん薬ではなくて薬味。新潟県妙高市特産の香辛料で、「寒造里」とも書くそうだ。唐辛子を雪の上にさらしてアクが取れ、辛味が柔らかくなったものをすりつぶし、麹と塩、柚などを加えて熟成させたものだそうだ。

手作り豆腐ピザ

手作り豆腐ピザ

焼きりんご

焼きりんご

豆乳プリン

豆乳プリン

 スープに至っては、タマネギ、人参、セロリ、大根、玄米などを煮込んで出来たもの。そして「ごまっチーノ」は「豆乳にゴマ、きなこの和ホッコリドリンク」とあるが、その通り、何か懐かしくほっこりする。もうひとつの飲み物「エキネシアティー」はネイティブアメリカンの伝統茶で免疫力アップに効果ありとある。両方を少しずつ飲んだが、ほっこりとし、元気になったように思う。

ごまっチーノ

ごまっチーノ

エキナシア

エキナシア

 その全ての食品に懐かしさを感じ、体に力が入ったように思うのは、それが本来食べるべきものだからだろう。味に対する嗜好性は、その食物を摂取することが、その生物にとって有益か有害かということから、生物が進化の過程で獲得した先天的な感覚だと考えられているそうだ。野生動物は当然のこととしてその感覚で物を食べるし、人間の場合も子供のうちはこの基本的な考え方で物を食べていると言う。それがいつの間にか、食習慣や経験で後天的に変化し、その人にとっての「おいしさ」という基準が作られる。それは往々にして体のためと言うより、舌、味蕾のためであり、あるいはのど越しのためであり、歪んでしまっていることも少なくない。

 その歪みがどれほどひどいかは、こうした素材そのものの味を生かそうと調理されるお店で提供されるものを食べれば、嫌でも知らされる。幸いにも我々には実に味わい深く美味しかった。食生活の修正は少々は出来てきたと嬉しい気持ちになる。

 言い古された信長のエピソードがある。囚われの身の三好家の料理人坪内を雇うかどうかで、試しに料理を作らせたが、信長の逆鱗に触れ、「こんな水みたいなもん、食えるか!」と彼を処刑しようとしたと言うのだ。しかし、坪内はもう一度だけ作らせてほしいと懇願して、京風の料理を味の濃い田舎料理にして出した。信長は喜んで、彼を料理人として召しかかえたと言うが、我々も知らず知らず信長になっている。京風か田舎風かでなく、健康に美味しいか、ただ舌に美味しいかの違いはあるが。我々も信長にならないように気をつけねばならない。

 満足して外に出ると北山通りの並木が一層生き生きと感じられた。そう言えば、この店が入っているNadiとは、サンスクリット語で「河の流れ」を意味するそうだ。そしてPing Pangとは、その川のエネルギーで、水が弾ける様だと聞いた。確かに川のエネルギーを感じられた。

 この美味しさをどう表現しようかと思っていると、我がスタッフが「芯があって一生懸命作っておられるお料理って、作り手の心まで伝わってきて、いいですよね」と言った。そうか確かに五つの味を芯が貫いていると言うか支えていると言うか、いや六つ目に料理人の芯を加えてもいい。あなたの味覚のゆがみを芯のある料理で測るのも必要かも。

[文・写真:moon]

Ping Pang Café
京都市北区上賀茂桜井町107-1 ジュネス北山一階
地下鉄北山駅4番出口西へ徒歩5分
075-723-0877
平日9時から21時、休日7時から19時
定休日 木曜日

このBlogは『moon』いう集合名詞のスタッフが、勝手に食事にお邪魔し、写真の許可だけを貰ってご馳走を頂戴し、これは掲載すべき美味であると感じたものだけ、食後に料理人などに少々のインタビューを試みて構成しています。各食品の感想を語ることを極力控えるのは、味は舌を媒体として個人個人が感じる以上、言葉では「美味しい」という表現が最高と思われますし、それ以上の表現はなかなか難しく、また自分自身で感じてもらいたいし、また個人個人の趣味もあります。ですから、なるべく写真で紹介して、全体としてのイメージを伝えることを主とします。但し、一切の責任は当ホームページの主催者にあり、賛同、苦情などはコメント又はメールにてお願いします。

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