激変する世界に向けて1200年生き延びてきたKYOTOから生き延びる智慧とヒントを発信

●冬はいみじう寒き
 「源氏物語千年紀」でにぎわう京都の気忙(きぜわ)しい師走。足元からじわじわと這(は)い上がってくる京都独特の底冷えは厳しく、つらいものがあります。
 
 千年の昔、清少納言が「冬はいみじう寒き、夏は世に知らず暑き」(『枕草子』)と記した気候は今も変わってはいません。
 
 そんな師走、西陣の大報恩寺と洛西鳴滝の了徳寺、三宝寺では年中行事の大根焚(だいこだき)が執り行われます。湯気の立つ熱々の大根をほおばって今年一年の罪とけがれを清めます。言わば忙中閑あり、今年一年、何とか無事息災に過ごすことができたという安堵(あんど)の表情が湯気の向こうに垣間見えます。

●釈迦の悟りのゆかり
 大報恩寺は千本釈迦堂と呼ばれて親しまれています。釈迦が菩提樹の下で悟りを開いた12 月8日の成道会(じょうどうえ)にちなむ行事で丸大根を横二つに切って(写真上)、切り口を鏡に見立てて梵(ぼん)字を墨書きして厄除(やくよ)けとし、鍋で大根煮として供したのです。

 7、8日の両日、屋根の描く線が美しい本堂の前では持ち帰り用の生大根が売られており(写真下)、参拝者が一椀(わん)の大根焚を食べて束の間、底冷えを忘れています。

 丸々とした聖護院大根は煮くずれせず、甘くて苦みがなく、京のおでんには欠かせません。

●親鸞と日蓮のゆかり 
 『祇園歌人』と呼ばれた吉井勇は「鳴瀧の大根焚きの行事済み京の寒さもとみに深まる」と詠じています。

 浄土真宗を開いた親鸞が鳴滝の地を通りかかった時、里人が地大根を塩味で煮てもてなしたところ喜ばれたと伝えられています。その親鸞をしのぶ報恩講が了徳寺の大根焚なのです。9、10 日の両日、親鸞には塩味の、参拝者にはしょうゆで煮つけて供されます。

 現在用いられている大根は亀岡産の長大根です。

 了徳寺から少し北の三宝寺は日蓮宗のお寺です。日蓮は大根を「あぢわひは忉利天(とうりてん)の甘露の如(ごと)し」としたためたそうです。また冷えた体を温めるとして柚子(ゆず)を珍重なさったので、柚子ご飯が添えられます。日蓮をしのぶ報恩御会(おえ)式なのです。

 大根焚はいわば庶民のための、冬の歳末の風物詩であり、宗教行事なのです。

大根焚

大根焚_2

[文・写真:菊池昌治]

【菊池昌治の著作】

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