激変する世界に向けて1200年生き延びてきたKYOTOから生き延びる智慧とヒントを発信

●白い縁どり
 緑濃く、独特の香りを持ち、ホロ苦い味のする菊菜は寒い冬の鍋の食材としては適役です。葉の形(写真上)は菊の葉をさらに深裂させてキク科の植物であることは疑いもありませんが、まだその花を見たことがありませんでした。花を待つことなく春の若葉、つまり植物の生命を食べてしまうので、春菊とも言われるのですから当然なのですが。緑が印象的な、春まだ浅い七草へ思いがつながります。

 春5月、通りかかった畑の一隅に黄菊そのものなのに花びらが白く縁どりされた花と、縁どりのない黄花を見つけました(写真下)。菊菜の花でした。「囀(さえずり)や春菊一花珠光る」とは河東碧梧桐の句。

 地中海周辺原産で、西欧では観賞用の花として栽培されています。野菜として食用にするのは日本や中国などアジア諸国に限られます。どうもあの香りが欧米の人は苦手なようです。

●その呼び名
 菊菜、春菊という呼び名ですが、江戸中期の方言辞典の『物類称呼』に「近江彦根にてろうまといふ。京大坂にてかうらい(高麗)ぎく又きくなともいふ。関東にてしゆんぎくといふ」とあり、食品類の名称や特質を解説した『大和本草』は「花黄菊に似たり。春花を開く。九十月にうふ。正月にもうふ。其葉及花煮て食ふへし。性良し。毒なし。少香氣あり」と記しています。春を待ち望む心を映した呼称といえます。

 傷みやすい軟弱野菜で、大都市近郊が主産地になっています。代表的な緑黄色野菜でカロテンやビタミンB2などを含んでいます。

●仕立てにも違い
 呼称と同様、栽培の時の仕立て方は関東が葉が立ち上がって脇に枝葉を多くつけ、根元から刈り取って出荷しますが、関西は茎が立ち上がらず、一つの株に根元から葉と葉柄が一体となった姿でいくつもに分かれるので株ごと引き抜き、根を切って出荷されています。

 京菊菜の葉が大きくて厚く柔らかいという持ち味を生かすには、塩ゆでし、おしたじに小一時間は浸して下味をつけ、白のすりごまと豆腐を裏ごししてす
り混ぜて、調味した白和(あ)えが一番。「夕支度春菊摘んで胡麻(ごま)摺(す)って」は草間時彦の句。

 肉料理との相性が良いので、戦後広く食されるようになった野菜です。


[文・写真:菊池昌治]

【菊池昌治の著作】

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