激変する世界に向けて1200年生き延びてきたKYOTOから生き延びる智慧とヒントを発信

 この震災の取材で、同じ現場に何度も行けたことはとても運が良かった。

 取材する側、される側、お互いに少しでも交流を図り打ち解けてから出ないとなにも分からないからだ。普通の取材だと、「なにが必要ですか?」と問いかけると大概それなりの答えが返ってくるものだ。だが、様々な事情が重なり合う避難所では、もっと慎重に進めないと真実は出てこない。

 例えば、若い女性の被災者にいま一番欲しいもの、必要なものと問いかけても簡単には答えてもらえない。震災から2週間。着の身着のままで食べて寝ることで精一杯の人に、着替えが欲しい、お風呂に入りたいなどの欲求があっても、恥ずかしいし何だか贅沢を求めているようで言ってもらえない。質問者が男性ならば尚のことだ。

 私は夕べも、その前日もシャワーを浴びている。だからそんなことには気づかない。勝手に「みんなあんまり困っていないのでは?」と勘違いする始末。

 そんな中、やっと取材先の避難所にも自衛隊が仮設のお風呂を作りはじめて取材となる。そこでやっと、被災者の気持ちを聞くことが出来る。要するに、当たり前の日常生活でしていることが必要だということ。食べ物だったり、寝る所、寒さを凌ぐものなど命を支えるものは誰でも気づくが、その周辺にある「その人の生活を支える日常」がいかに大切かを感じた。

 そのことに気づくと、避難所には足りないものがたくさんあることに気づく。お風呂に入ることだけを考えても、どれだけたくさんの物が必要だろうか?空間だって、マナーだって、衛生面だって整えようと思えば本当にたくさんある。

 この時、私たちはいかに多くの物や場所や、つながりに守られて生きているのか分かった。被災者の状況に少し近づけることで、不思議と聞くべきことが的を得てくる。お互いに少し距離が近くなる。出来上がったお風呂に入った被災者の嬉しそうな表情に救われて仕事を続けることが出来た。

 余談だが、この頃有馬温泉近くのラブホテルが入浴を商売にしていたと聞いた。一人1回5,000円だったそうだ。本当に腹立たしいうわさだった。

【文:kubo】

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